うまい棒めんたい味の如く映画を語る

ちょっぴり辛く、どちらかと言うと甘い感じで 映画をレビューしていきます。 ホラー、サスペンスが中心です。

第七十七回映画レビュー「その男、凶暴につき」

その男、凶暴につきその男、凶暴につき
(2007/10/26)
ビートたけし、白竜 他

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【あらすじ】
凶暴な男、我妻諒介はとんでもないはみだし刑事、白痴の妹と一緒に暮らしている。
彼はいつも犯人を必要以上に痛めつけるため、上層部の悩みの種となっていた。

部下の菊池と共に麻薬密売人殺害事件の捜査を進めていくうちに、同僚で恩人でもある
岩城が麻薬を横流ししていることを突き止める。しかし、その背後には
この街を牛耳る実業家仁藤と、もう一人の凶暴な男清弘が潜んでいた。








北野武監督の記念すべき初監督作品。

本当は深作欣二監督が手がける予定でしたが、
スケジュールの問題でトラブルとなり、結局武本人が監督となり、
脚本が大幅に書き換えられたのは有名ですよね。

この後北野武監督は世界からも認められる名監督となるわけですが、
その始まりは棚から牡丹餅的な、全くの偶然だったんですね。

もしこの作品が予定通り深作作品として作られていたら、一体どうなっていたでしょうか。
やはり良作にはなると思いますが、ここまで印象に残る作品にはならなかったかなと
僕は思います。





北野映画といえば、キツめのバイオレンス描写、
映画的な展開や台詞をできるだけ排除したスタイルなどで知られていますが、
この作品でも未成熟ながら、そのようなスタイルで撮られています。



例えば、我妻達のグループが犯人を追うシーン
普通の映画だったら刑事達と犯人の全力疾走による追いかけっこの末に
格好良く捕まえます。

しかし、この映画の刑事達は犯人を追跡中だというのに、走るのを止めて
のろのろ歩いて休憩します。
「逃げられちゃったなー、やっべー」って感じで

そりゃあずっと走っていられるわけないですから、休んで当然ですよね。





結局その犯人はどうして捕まえたかというと、我妻刑事が車で轢いちゃいます。
もちろん、故意に。「おらおらおらー、へへっへへ」とか言いながら






こんな事、今の日本じゃ許されないですよね。
確実に大スクープものですよ。
お昼のワイドショーで「逃げる犯人を笑いながら・・・・恐怖の暴力警官」とか言われちゃいます。

まあそんなこと言ってたらほとんどの刑事映画の主人公は刑務所入ってなきゃいけないんですけどね。





事の発覚を恐れた上層部がなんとかしてくれたみたいで、
我妻は署長(佐野史郎)からイヤミを言われるだけで済みますが、当然反省なんかしません。

こんな暴力刑事の我妻のキャラクターが、本作の見所でもあります。





この人はどうも「何か悪いことをしたやつ=人間じゃない=殴っていい」という考えらしく、
犯人に対しては例えそれが子供であろうがぼっこぼこに殴ります。
もう殺さないのが不思議なぐらい。
というか、本当に殴ってるシーンもあります。





しかし、犯人には鬼のように厳しい我妻刑事も
たった一人の家族である妹に対しては、普通の「優しい兄」として振る舞います。
我妻刑事は確かにアブない人ではあるんですけど、
決して完璧にイカれた狂人ではないんですね。





忘れてはならないのが、白竜演じる組織の殺し屋清弘
この物語のもう一人の主役と言っても良い人です。

この人もまた凶暴な男で、しかもヤクザなわけですから
平気で人を殺します。

ヘマした下っ端を追い詰めるシーン
逃げ場のない下っ端の恐怖がビンビンと伝わってきて、非常に恐ろしいです。

しかし、我妻が妹には優しいのと同様、
ボスの仁藤に対しては絶対的な服従を誓っています。



中盤は組織を潰そうとする我妻とそれを迎え撃つ清弘、二人の「凶暴な男」の対決を描きます。

そしてクライマックス、妹を清弘の部下に誘拐されて本当にイカれた我妻と清弘の壮絶な撃ち合い

廃工場でのシーンなのですが、外からの光の加減と
緊張感漂う雰囲気が絶妙な具合でマッチしていて、非常に格好よいです。

ハリウッド映画などの走ったり飛んだりしながらの銃撃戦ではなく、
ひたすら撃ちまくるだけの銃撃戦となっていますが、もうこれがものすごく良いんです。





壮絶な銃撃戦の末、勝ったのは・・・・・・?






もうなーんの救いもありません。
ただ一ついえることは、「結局何も変わらなかった」ということでしょうか。

ラストシーン、これはオープニングの1シーンと同じなんですが、
もう後味最悪なんですが、これまたシビれます。
「まさかこいつが・・・・」って感じでね






脚本面で荒い部分もかなりあるのですが、
見るべきところも盛りだくさんな良作だと思います。






なお、本作品の脚本を手がけていた野沢尚さんが
書き換え前のオリジナルに近い形のストーリーを再構築して小説化した
「烈火の月」という本を出されています。

「その男〜」にリスペクトしつつも、我妻や清弘のキャラクターが
深く掘り下げられ、「その男〜」とはまた違った味を持つ作品です。
また機会があればこちらもレビューしたいと思います。




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テーマ:DVDで見た映画 - ジャンル:映画

コメント

こんばんは

この作品は強烈でしたねぇ。
ここまでリアルで救いのない暴力描写は初めて観た気がします。
北野武監督の独特な雰囲気が初監督作品から思いっきりあふれ出てましたね。
とても後味が悪い終わりで、しばらく憂鬱になりましたが、
今思えば、この時代にここまでインパクトがある映画って、
日本にはなかったのかなぁなんて思った記憶があります。
不気味さと重苦しい雰囲気は北野作品で一番だと思います(^^

  • 2008/04/18(金) 18:29:00 |
  • URL |
  • Toy's #-
  • [ 編集]

>Toy'sさん

トイレでの連続ビンタのシーンなんかはものすごく痛そうでしたね。
初監督でここまでインパクトのあるものを撮れるというのはやはりすごいことだと思います。

雰囲気においては個人的に「ソナチネ」の方が良いと感じましたね。

  • 2008/04/20(日) 22:08:17 |
  • URL |
  • かからないエンジン #BPVKXLjE
  • [ 編集]

北野=バイオレンスを印象付けた作品。ビンタシーンが強烈でした。

  • 2008/04/21(月) 16:41:51 |
  • URL |
  • pxsrx774 #-
  • [ 編集]

へー!
脚本が野沢尚で、「烈火の月」が再構築された小説版とは知りませんでした!
ちょっと読んでみたいなぁ。貴重な情報ありがとうございます!

  • 2008/04/23(水) 02:17:15 |
  • URL |
  • るしは #eqP7eH0Y
  • [ 編集]

>pxsrx774さん

あのビンタシーンは役者さんの「もっと出番が欲しい」という希望であれだけ長くなったそうですね。
いやはや、ものすごい根性です。

>るしはさん
是非お読みになってくださいな。
ハードボイルド感が溢れていて面白いですよ。

  • 2008/04/24(木) 07:42:07 |
  • URL |
  • かからないエンジン #t6XyeTJs
  • [ 編集]

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